人から人へ、親から子へと長い間語り伝えられてきた伝説、それは生の郷土の歴史であり、かけがえのない文化遺産といっても過信ではありません。
伝説には多少の脚色があっても、郷土に根ざした先人たちのすばらしい英知や心情には現代に生きる私たちの心をとらえてやまない、不思議な力が秘められているように思われます。
稲葉郷の天翁院入り口の道路をはさんで、足跡のかっこうをした六六〇平方メートル(二百坪)ほどの水田が、二つ並んでいた。土地の人たちは、大男のわら草履のあとだと考え、それが小判のような形をしているところから、「小判田」と呼んだ。大男の名はダイダラボッチ(大太法師)といい、この巨人が筑波山に腰をかけて、両足をそろえて置いたところが、この足跡だというのである。